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市民後見人 ④ [成年後見]

  横浜市が、昨年(平成23年)厚生労働省の「市民後見推進事業」(モデル事業)に参加し、様々な論点について議論したことは、前述のとおりである。
 http://www.mhlw.go.jp/topics/kaigo/dl/shiminkouken_17.pdf
  
 それらの議論をとおして、横浜市では以下のような理念に基づく仕組みを創る。
http://www.mhlw.go.jp/topics/kaigo/dl/shiminkouken_74.pdf

◎ 地域で暮らし続けることを支える地域福祉の推進
  認知症や障害があっても地域で暮らし続けることを可能とする、ノーマライゼーションの理念を、市民参画で実践する

◎ 成年後見制度本来の担い手としての市民後見人の養成
  同じ市民の立場で本人に寄り添い、きめ細かい支援を行う市民後見人を本来の担い手として養成
  市民がお互いに支えあう共生社会の実現をめざす

◎ 市民、社協、専門職、 行政等による重層的な権利擁護体制の構築
  各区の成年後見サポートネット等で培った連携を土台に、市民の参画を得て、それぞれの特徴をいかした権利擁護のネットワークを強化

  この3つの柱のうえに、「市民後見よこはまモデル」 を創り上げ、横浜らしく、地域福祉推進と一体となって区域での養成と活動支援を展開する。注目すべきは、市域ではなく区域できめ細かく市民後見人を支援するネットワークを構築することである。

 実施体制としては、以下のように公的機関と専門職団体が、有機的に連携して、市民後見人を養成し支援するという仕組みを創る。

①横浜市社協「横浜生活あんしんセンター」
  後見推進機関として市民後見人養成・支援の中核を担い、研修実施や人材登録、区社協への支援を行う。
②区社協「○○区あんしんセンター」
  区域の市民後見の実施機関として、市民後見人への助言等日常的な活動支援を行い、区域の小地域支援と連動した市民後見を推進する。
③専門職団体
  区成年後見サポートネットに参加し、市民後見人が求める専門的助言を行う。その際区社協が仲介を行い円滑に実施する。
④区役所
  地域包括支援センター等と連携して、区長申立事案の後見人候補に市民後見人が相応しいか検討する。また地域福祉保健推進の観点で区社協とともに区域での市民後見推進を図る。
⑤横浜市役所
  市全体の市民後見推進を統括し、家庭裁判所との調整や実施体制の整備を行う。

 このように、行政・社協といった公的機関と、弁護士会・社会福祉士会などの専門職団体が、重層的に養成と支援に関わることによって、後見監督人としてではなく、後見監督人よりも密接かつ組織的に関わる仕組みを構築して、市民後見人を常時バックアップする体制をつくることにした。

 横浜市における市民後見人推進のロードマップは、以下のとおりである。まず、3区のモデル区で養成・支援を実施し、その後18区に拡大していく。

 平成24年度 <第1期モデル区> 募集・説明会 養成研修(半年程度)
 平成25年度 <第1期モデル区> 実務実習(1年程度)
          …主に市社協が実施する法人後見の支援員に同行するなどして実務の実態を体験する
 平成26年度 <第1期モデル区> 登録・個人受任
          <第2期実施区>   募集・説明会 養成研修(半年程度)

現状では、各区の社協は支援機関としての体制整備ができていない。約2年間で、公的機関の体制整備をし、専門職団体との連携を強めていくことになる。前途は多難だが、地域に根ざした成年後見制度を確立するための産みの苦しみを、地域を挙げて乗り越えていかなければならない。歯を食いしばって邁進するしかないといったところだ。

(おわり)
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市民後見人 ③ [成年後見]

 厚生労働省は、昨年(平成23年)「市民後見推進事業」(モデル事業)を展開した。それに応じて全国37のし市町村がこのモデル事業を実施した。

 この事業は、厚生労働省が全額事業費を支出する、いわば10/10の事業である。横浜市もこのモデル事業を実施した。
http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/shiminkouken/index.html
  
 このモデル事業に基づき、「横浜市における市民後見人検討委員会」では、以下のような論点について議論がなされた。

1 市民後見人の必要性
  なぜ市民後見人が必要なのか。

  この点については、地域で生活をする高齢者・障害者を、地域で支えて行くという地域福祉の考え方からすれば、地域に根ざした市民が成年後見人に選任されて高齢者・障害者を支えて行くことが本来の姿ではないのかと結論を導いた。成年後見人の受け皿が足りないから、市民後見人を養成するという考え方ではなく、成年後見制度本来の趣旨から必要性が導かれることを確認した。

2 市民後見人の考え方(定義・位置づけ、報酬の有無など)
  施設入所者を中心に考えるのか、在宅を中心と考えるのか。
  身上監護を中心に考えるのか、身上監護+財産管理と考えるのか。
  報酬請求を認める否か。認めた場合、養成機関に上納は可能か。

  地域で地域の高齢者・障害者を支援するという視点からすると、在宅の高齢者・障害者をすることが基本になる。しかし、施設入所の高齢者・障害者を排除するものではない。
  また、高齢者・障害者をトータルで支援するという成年後見制度の趣旨からすれば、身上監護にだけ偏って支援するのではなく、身上監護の基盤となる財産管理についても、市民後見人は担当すべきである。
  報酬については、市民後見人が責任をもって後見業務を実施するためには、報酬請求を認めるべきである。市民後見人が担当する後見業務の特性からすると、後見報酬が多額のものになることは考えにくいことも、この考えの下支えになっている。

3 市民後見人の活動形態
  法人後見支援員として活動するのか、個人として活動するのか。

  地域の市民が地域の高齢者・障害者を支援するという理念からすると、市民が個人として活動することが基本になる。法人後見の支援員としての活動は、市民後見の理念とは少し異なる視点になる。

4 市民後見人の活動内容(生活の場・地域とのつながりなど)
  広域対応をするのか、地域で対応していくのか。

  地域の市民が、地域の高齢者・障害者を支援するという視点からすると、広域対応ではなく地域で対応していくべきである。

5 登録と受任までのサポートと、受任後ののサポート
  市・市社協・区社協など公的機関と、弁護士法・社会福祉士会など専門職団体は、どのようなサポート体制を整えるべきか。

  市民が市民を支える場合、重層的な養成と支援が不可欠である。それがないと、素人である市民後見人は高齢者・障害者に対して実質的な支援をすることができなくなる。また、実質的な監督を担保するためには、行政や社協などの公的機関と、弁護士会や社会福祉士会などの専門職団体との密接な連携が必要である。

  横浜市では、市民後見人について、このような論点整理をした上で、制度設計をすることになった。

(つづく)
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市民後見人 ② [成年後見]

 市民後見人を養成し、既に家庭裁判所から選任されている市町村がある。
 大阪市では50件を超え、北九州市、世田谷区、品川区でも、それぞれ30件を超えている。

 これらの市町村の市民後見人像は区々である。
 市民後見人のあり方について、法律には何の基準も示されていないからだ。
 いわば市町村が、その地域に合った仕組みを創りその仕組みに則って運営するという建付だ。

 
 このように、何らの枠組みも示されていないことから、
 某国立大学は「××大学市民後見人養成講座」を開設した。
 受講料は、なんと63,000 円。
 しかし、この講座を受講したからといって家裁から市民後見人に選任される保証はない。

 
 養成しさえすれば、それで終わるというものではない。
 むしろ、養成した後に家庭裁判所に推薦し、選任後市民後見人を支援する仕組みが重要だ。
 
 養成と支援の仕組みとして、地域の公的機関(市町村と市町村社協)と、地域の専門職団体(弁護士会や社会福祉士会)がどれだけ重層的に関わっているのかという点が重要である。

 市町村ごとに市民後見人に対する位置づけが異なる。その位置づけによって市民後見人養成のカリキュラムも異なるであろう。また、市民後見人に対する支援は、市民後見人が活動する地域の行政と地域の専門職が支えて行くべきだ。

 その意味で、養成のプロセスと、支援のプロセスに、行政と専門職がいかに深く連携しているのかが、重要なポイントとなる。

 厚生労働省も、平成24年2月の全国介護保険・高齢者保健福祉担当課長会議で、市民後見人の育成及び活用の取組みについて、市町村が責任主体であり、専門職団体と連携をして、市民後見人の養成と支援をすべきであるというスキーム示すに至った。

(つづく)
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市民後見人 ① [成年後見]

 改正老人福祉法が平成24年4月1日に施行される。
 私はこの改正の中でも、老人福祉法第32条の2の創設に注目している。

 同条は、後見等に係る体制の整備に関する条文だ。
 その内容は、
・市町村は、後見、保佐及び補助の業務を適正に行うことができる人材の育成及び活用を図るために必要な措置を講ずよう努めるものとすること。
(1) 研修の実施
(2) 後見等の業務を適正に行うことができる者の家庭裁判所への推薦
(3) その他必要な措置(※) 
(※)例えば、研修を修了した者を登録する名簿の作成や、市町村長が推薦した後見人等を支援することなどの措置が考えられる
・都道府県は、市町村の措置の実施に関し助言その他の援助を行うよう努めるものとすること。

 この法改正の趣旨は、地域の高齢者は地域が支援をすべきだという理念に基づく。

 すなわち、高齢者が地域で自立した生活を営むためには、医療・介護・予防・住まい・生活支援サービス・が切れ目なく提供される「地域包括ケアシステム」の構築が必要であり、そのシステムの中核に市民後見人を位置づけようというものだ。

 障害者についても、障害者虐待防止法が平成24年10月に施行され、平成24年度から市町村の障害者成年後見制度利用支援事業が必須事業になり、障害者の権利擁護を強化する動きがある。

 老人福祉法の改正は高齢者に関するものではあるが、成年後見制度は高齢者のみならず、障害者もターゲットにしているため、市民後見人による支援の対象は障害者も含まれる。

 「市民後見人制度」は、地域で生活する市民が、地域で生活する高齢者・障害者を支援するという理念に基づく制度だ。

 地域で高齢者・障害者を包括的に支援するためには、成年後見制度をより一層充実させる必要がある。そのための社会資源として市民後見人を養成し支援する必要があるという理屈だ。

 http://www.mhlw.go.jp/topics/kaigo/shiminkouken.html
 
(つづく)
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後見 高齢者の見守りⅢ その5 [成年後見]

(前回のつづき)

 第1回のケース会議で施設入所に同意した被後見人が、その後施設への入所を拒絶し始めた。
 
 そこで、ケアマネに相談。
 何とか在宅で支援をすることができないか、介護保険外のサービスを使っても構わないと話を切り出した。しかし、ケアマネは「在宅では絶対にムリだ。この次は死んでしまう」と言うのだった。

 病院のPSWにも相談した。
 彼女は、「褥瘡は完治していて病院での治療は終わった。あとは受け入れてくれる施設に移ることが良いだろう。自宅でのひとり暮らしは、食事と服薬の管理ができないためムリだ。この点については、主治医の見解も一致している」という。ケース会議に本人も出席してもらって、主治医から施設入所の説得することになった。
 
 12月中旬、第2回のケース会議を病院で開いた。

 主治医やPSW、ケアマネから状況の報告を受けたのち、主治医による被後見人の説得が始まった。
 Dr.「救急車で病院へ運ばれた時の状況を覚えている?」
 本人「…覚えていない」
 Dr.「栄養失調と脱水症状で、2日間自宅で倒れていて、救急車で運ばれてきたときには一歩間違えれば亡くなっても不思議ではない状況だったんだよ」
 本人「…」
 Dr.「そのような状況からすると、自宅で1人でで暮らすのはできないことは分かるよね?」
 本人「全然分かんない。小さな家でも自分の家があるんだから、家に帰る。正月の支度もしなければならないから、こんな所にいる場合じゃないのよ。早く帰して」
 Dr.「それはできない。褥瘡などの体の傷は治ったけど、1人で生活できない状況は変わっていないんだよ」
 本人「もう大丈夫。長い間この病院にお世話になって、ぴんぴんになったから…」
 Dr.「あなたはそう思うかも知れないけど、主治医の私からみると、以前の状況は変わっていない。家にもどれば、また食事をとらず、薬も飲まないようになる。そして、また倒れる。今度は死んじゃうかもしれないよ」
 本人「絶対に、家に帰る。施設には行きません」

 このような会話が1時間半続いた。

 ケース会議では、このまま精神科病棟での入院を継続する方針で行くことに決まった。
 そして、会議が終了する間際、コツコツとドアを叩く音が。彼女が私に用事があるという。廊下で立ち話をした。
 彼女「1万円貸して」
 私「1万円でどうするの?」
 彼女「タクシー拾って家に帰るの」
 私「ダメだ。そんなことできない」
 彼女「だったら、先生の車に乗せてって」
 私「あのね…。この病院から出るためにどうしたら良いか、みんなで考えているんだよ。○○さんを苦しめるために話をしているわけではないんだ。施設に一旦入って、自宅で生活ができると主治医の先生が判断してくれれば家に帰れるんだよ…」

 しばらくして彼女は「それじゃあ、1か月くらいそこへ行けばいいの?」「2週間じゃ、ダメなの?」「1週間でも良いでしょ?」と言い始めた。しめた!

 翌週、彼女は住宅型の有料老人ホームへ入居した。
 当初は、「早く帰して」と担当者に言い続けていたそうだ。
 しかし、年が明けて私が会いに行ったときには落ち着いていた。友達ができたと言っていた。
 お嬢さん(長女)には、「ここは良くしてくれるの。買い物やレストランにも連れて行ってくれるの。ずっと、ここで暮らすことにした」とニコニコしながら言っていたそうだ。そして、茶箪笥と小さなテーブルを買ってくるように頼まれたそうだ。

 彼女の新しい人生が始まったように思う。
 とはいえ、この後もいろいろな問題が起こるのだろうな。どんな状況になっても寄り添ってあげよう。

(おわり)


 

 
 
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後見 高齢者の見守りⅢ その4 [成年後見]

(前回のつづき)

 入院から一ヶ月後、ケース会議を開催した。
 精神科病棟に、主治医、看護師、PSW、ケアマネ、ケースワーカー(区役所)、次女、私の7人が集まった。次女は母親が看護師と話している隙に閉鎖病棟へ入ってきた。

 はじめに主治医から状況の報告があった。
 約三日間倒れている間にできた恥骨と頰の褥瘡が深く、治療に約一ヶ月かかる。神経症状は妄想性障害が重篤だか薬が効いている。服薬管理ができているので安定に向かっている、という内容だった。服薬管理ができる環境を作れれば退院をしても大丈夫だとも言う。

 次に、看護師とPSWから、褥瘡が治癒すれば退院は可能だが、自宅での一人暮らしは難しい、施設入所を考えるべきだという報告があった。場合によっては、精神科病院への転院も考えられるが、長期間の入院は難しい。服薬管理ができる有料老人ホームが相応しいのではないかとの意見だった。ケアマネと次女も、同意見だった。

 ケース会議が終わってから、私は被後見人に面談をして帰宅することにした。
 私「主治医の先生が、自宅では生活が難しく施設に入所したほうが良いらしいよ」
 被後見人「そうね。またこんなことになったらいけないから、しょうがないわね。施設に入るわ」
 本人の了解を得て、施設を探すことになった。

 私は、被後見人に相応しい老人ホームを探し始めた。また、妄想性障害の高齢者を受け入れてくれるグループホームも探した。その結果、住宅型有料老人ホームと特養を母体とするグループホームからアポイントをとることができた。

 ケース会議から一ヶ月後、私は被後見人に会いに行った。
 私「○○さんに相応しい施設が見つかったよ」「これでこの病院から退院ができるね」
 被後見人「私、ちっちゃいけど家があるのだから、施設に入るのは嫌だ。家の方が気が楽だから」というのだった。
 私「このあいだ、施設に入ることにしたの覚えている?自宅ではなく、施設に入るのはやむを得ないって言ったの覚えている?」
 被後見人「そんなこと、言ったかしら…」
 私は、はしごを外された想いがした。折角、施設を探し当てたのに…。

(次回につづく) 

 
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後見 高齢者の見守りⅢ その3 [成年後見]

(前回のつづき)

 私は被後見人の次女に、被後見人が精神科病棟に移ったことを電話で伝えた。
 そのうえで、内科的な治療をするとともに、精神科的な疾患の治療をメインにするという、主治医の治療方針を説明した。いつ最期を迎えるかもしれない、親族の面会を勧めるという主治医の発言を付言した。
 
 「分かりました、すぐに面会に行きます」という言葉を期待していた私は、戸惑った。
 次女は「私は母に会えません」と言うのだった。

 長期間にわたって、次女は母から理由のない「いじめ」や「虐待」を受け続けていたらしい。
 「父に似ていた私を、母は嫌っていたため、ことある毎に叱責を受け続けていました」
 「母は自分に数百万円を貸したと言い。直ぐに返しなさいと繰り返し言われました」
 ある時から、次女は母の声を聞くと体に異変を来すようになったと言う。

 5月に亡くなった夫も、生前同じようなことを言っていた。
 家に居ると50年以上も前の浮気を責められ続け、夜寝ることもできなくなったので家を出たと言うのだ。夫は妻である被後見人の話になると、露骨に不愉快な表情になる。

 私も、同じようなことを体験をしたことがある。
 毎月被後見人に生活費を届けに行くと、突然目がつり上がり、長時間夫をなじり続けるのだ。
 今でも夫が家に入ってきて、浮気相手の女のために自分の洋服や下着を持ち出すとも言う。
 80歳を超えた夫にはそのようなことはできない。
 何かの勘違いかもと言っても、彼女の妄想は更にエスカレートしていく。
 娘の話をしても、被後見人は攻撃的な発言を続けた。自分の金を持ち逃げして、まだ返してくれないと繰り返す。

 
 4、5年前に、私の法律事務所で、被後見人と夫、それに娘2人が面談した。
 被後見人に事故があった場合、夫や娘たちの協力は不可欠であり、関係修復が不可欠だと考えたのだ。しかし、物別れに終わった。被後見人が夫や娘たちをなじり始め、夫と娘は「冗談じゃない」と言って席を蹴るのだ。

 この頃から、私は被後見人は認知症ではなく、何らかの精神障害に罹患しているのではないかと思うようになった。そして、主治医である精神科の医師にその旨を伝えた。しかし、薬や指示は何も変わらなかった。

 もともと被後見人は精神障害であった。
 しかし、介護保険上のサービスを受け易くすることと、成年後見人を選任し易くするための便法として、主治医は「認知症」と診断したのではないかと考える。被後見人への支援を考えたとき、精神障害者であることよりも、認知症であった方が、様々なサービスを受けやすいという状況が、主治医にそのような診断をさせたのではないかと思う
(これは、あくまでも私の推測にすぎないが…)。
 

(次回に、つづく) 
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後見 高齢者の見守りⅢ その2 [成年後見]

(前回のつづき)

 救急搬送されて約3時間後、面会を拒否した次女を横目に、私は救命救急センターの処置室で被後見人に会った。
 看護師さんに連れられて処置室に入り、ある患者の前まできた。
 その患者は、顔面がひどく腫れていて、両目の周りや顎は紫に腫れ上がっていた。
 ベッドのネームプレートを見なければ本人と識別できないほどに、変わり果てた形相だった。

 その後、救命救急センターから集中治療室(ICU)に移ることになり、私は付き添って行った。
 意識は戻りつつあるようだが、本人は「悪いわね…」というだけで、意味不明のことをぶつぶつと言うのみだ。
 医師から状況の説明があった。
 脱水症状と肺塞栓のほかに、意識障害があるという。
 しばらくICUで経過を観察することになった。

 翌日、見舞いに行った。
 本人は私を認識しているようだが、意味不明の言葉を繰り返すだけだった。
 医師は意識障害の原因が分からないという。

 数日後、精神科の医師から電話があった。
 意識障害の原因を探るために、精神科病棟に入院させたいと言う。
 「医療保護入院」の同意をしてもらいたいと言うのだった。
 成年後見人は、精神保健福祉法でいう「保護者」の第1順位であるため、私が入院の同意権をもつ。

 その日の夜に病院を訪れ、精神科の主治医の話を聞いた。
 病名は「妄想性障害」だった。認知症ではないと思っていた私は、この病名を聞いて、ある意味納得した。
 閉鎖病棟に入院している本人に面会をした。
 本人は「早く家に帰りたい」と繰り返し言っていたが、服薬管理ができず、内科的な治療も必要なため入院はやむを得ないと判断した。そこで、私は医療保護入院に同意した。
 主治医に、娘2人との面会について質問をした。
 すると、主治医は「いつ何が起こるか分かりませんので、面会を勧めます」という。
 
 面会直後、私は次女に電話をした。

(つづきは、次回に)
 
 
 
 
 
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後見 高齢者の見守りⅢ その1 [成年後見]

 私が成年後見人をしている80歳代の女性について。この方の詳細は、「成年後見③」を見ていただきたい。

 ひとり暮らしの彼女は、毎日牛乳の宅配を受けている。

 午後7時、その牛乳が3本、手つかずまま玄関先に並んでいるという報告がケアマネージャーからあった。家の中で何らかの異変があったことは想像がつく。デイサービスにもここ一週間行っていない。緊急事態であることをケアマネに伝えた。

 ケアマネは、カギが内側から掛けられていると言う。そこで、警官の応援を求めるように指示した。

 警官は2階の窓から家の中に突入した。
 彼女は1階の台所で倒れていた。
 意識はなく、便失禁をし全裸の状況で発見された。
 犯罪とは無関係であることが確認され、救急搬送された。

 午後8時、私は救命救急センターに到着した。

 その少し前に、私は彼女の娘(次女)に電話をした。
 状況を説明し、直ぐに病院へ来るように伝えた。
 娘とその夫は暫くして病院に現れた。

 約1時間後、救急救命の医師から、以下のような状況が説明された。
 意識は戻るかもしれないが余談を許さない状況である。
 脱水症状があり、血栓が何カ所かにあり、肺塞栓を発見した。

 さらに1時間後、処置室での面談を認められた。
 私は娘を促して面談をしようとしたが、娘は「会いたくありません」と言う。
 「お母さんの命に関わることで、もしかしたら二度と会えなくなるかもしれませんよ」と言っても、娘は面談を拒否した。
 やむを得ず、成年後見人の私だけが面談をすることになった。

(つづきは次回に)
 
 
 
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後見 障害者の身上監護Ⅳ [成年後見]

 約8年前、70歳代後半、統合失調症の男性の成年後見人に就任した。
 姉、社会福祉士、私の複数後見だった。

 姉と弟は仲が良く、他に身寄りはない。弟は、以前一部上場会社に勤務していたが、統合失調症を発症し退社した。その後、姉と弟が両人名義の一戸建ての自宅で2人だけの生活を始めた。弟は人見知りが激しく、姉以外の人と会話をするとができない。そして、姉は、食事の世話や洗濯、掃除など、高齢の姉弟の生活に限界を感じていた。

 私が成年後見制度に関する講演をしているときに、姉は受講生として私の話を聴いていた。そして、自分の弟のために成年後見人を選任したいと考えた。姉は、自分と弟が一生一緒に暮らしたいと考え、弟の成年後見人が選任された場合には、弟と一緒に暮らせる施設に入所することを望んでいた。

 家庭裁判所は、弟の問題点を回避して支援をするには、複数後見が必要であると判断した。

 姉は、日常生活の支援を中心に後見人として活動をする。
 社会福祉士は、姉と弟が一緒に暮らせる終の棲家(施設)を探すことを中心に活動する。
 私、弁護士は、姉と弟の財産を総合的に管理することを中心に活動する。

 社会福祉士は、姉と弟と一緒に有料老人ホーム巡りを始めた。施設を見学しながら、2人の身上監護に必要な支援のあり方を分析していった。私は、1ヶ月に一度お宅を訪れ、財産管理の方法について検討を始めた。

 約1年後、姉と弟は、気に入った有料老人ホームに入ることができた。隣どおしの部屋で、必要があればお互いの部屋を行き来できる環境。2人は安心して生活ができる終の棲家を見つけた。社会福祉士は大いに2人から感謝された。

 その後、社会福祉士が後見人を辞任し、姉と私との複数後見に移行した。社会福祉士の辞任は、就任当初から施設入所が決まった段階で辞任するという既定どおりの事態だ。3年後に弟が亡くなるまで、姉と私の複数後見は続いた。姉と弟は、2人で楽しい生活を送った。

 被後見人の状況に応じて、複数後見には様々なバリエーションがある。

 



 
 
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