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高齢者虐待対応専門職チーム② [弁護士会]

(昨日のつづき)

 弁護士と社会福祉士がチームを組んで、市町村・地域包括支援センターが行う虐待対応のケース会議に参加するというのが「専門職チーム」のスキームである。

 この場合、2つのマッチングが必要になる。

 
1 弁護士会と社会福祉士会との間でのマッチング

  日頃から弁護士会と社会福祉士会との間に交流があれば、それほどハードルは高くない。しかし、高齢者虐待についてだけ「チーム」を組もうというのは、かなりハードルが高い。

  そして、チームができた後の問題がある。市町村からケース会議への参加を求められた場合に、出席できる弁護士・社会福祉士をどのように探していくのかという点だ。特に、社会福祉士の大半は、都道府県や市町村の役所に勤めている人が多く、ケース会議を開催するときに出席可能な社会福祉士を確保することはかなり難しい。

 
2 「専門職チーム」と市町村とのマッチング

  仮に、弁護士会・社会福祉士会側のマッチング体制が十分出来上がっていても、「チーム」と市町村とのマッチング(契約)は、ハードルが高い。市町村によっては、役所にも社会福祉士がいるから、弁護士だけで良いと考えているところもある。

  市町村の担当職員である社会福祉士は、虐待事例を客観的に俯瞰することは難しい。むしろ、上司の担当課長に対して「虐待認定」や「緊急性」について、部下の社会福祉士が意見を言うことができないこともある。また、担当課長としては自己の保身のため、部下の言うことを素直には聞き入れられないということもある。そのような関係性からは、虐待に関する事実確認や緊急性の判断がゆがんだものになる可能性が高い。

  そのために、利害関係のない社会福祉士と弁護士が、客観的な立場から冷静にアドバイスをすることが重要になる。

  放っておけば高齢者の命に重大な結果が生じるおそれがあるのに、虐待者(高齢者を養護している人)からの強烈な脅しに屈して、虐待対応ができないという事態に陥る。

  「専門職チーム」は、そのような場合にケース会議の場で、足りない情報は何か、その情報は誰から取得することができるかというところから入っていく。そして、それらの情報に基づいて、虐待認定や緊急性の判断、とるべき措置などについて、法律の専門家と、福祉の専門家から、客観的なアドバイスをする。

  市町村が虐待に対応したときのリスク(虐待者からの訴訟リスク)と、虐待対応しないことによるリスク(被虐待者の死亡)を比較衡量すると、市町村は適切に虐待対応すべきであることを理解してもらうことも、「専門職チーム」の役割のひとつである。

(つづく)
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コメント 2

BZK

 行政は「硬直性をもつものの安定性」があります。そこに「対応の迅速性・弾力性」などが、うまく組み合わされ調和していく制度設計ができないかと思います。
by BZK (2012-04-19 05:22) 

emmei1

確かに、行政の安定性に、迅速性と弾力性が組み合わされると、鬼に金棒ですね。「専門職チーム」の制度趣旨は、まさにその点にあります。行政担当者の背中を、タイムリーに、思い切り、押してあげることが「専門職チーム」の仕事の重要な部分を占めていると思います。
by emmei1 (2012-04-19 15:50) 

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