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ホームロイヤー養成講座 [弁護士会]

久しぶりにBlogを。

2012年6月から、日弁連の高齢社会対策本部の事務局長を拝命しました。
それ以来、県外で講演する機会が増えました。

先週は、札幌弁護士会で「ホームロイヤー養成講座」の講師をしました。
札幌弁護士会の会員だけではなく、旭川弁護士会とテレビ中継をし、函館弁護士会、釧路弁護士会、帯広など北海道全域から弁護士が研修に集まりました。
北海道では少し有名になったのかもしれません。

ところで、「ホームロイヤー」ってなんだ?という疑問があるでしょうね。
確かに聞き慣れないフレーズです。
「ホームドクター」という言葉は比較的ポピュラーです。
これと同様に、ある家庭のお抱え法律家というイメージです。
しかも、対象になるのは高齢者です。
高齢者にとって、老後をおくる場合、様々な問題が起きます。
そのような様々な問題に対して、包括的かつ長期的に支援するために、このような仕組みを考えました。
これまで、弁護士に対する敷居が高かったため、このような敷居を取り払って、高齢者に寄り添うことを仕事の中心に据えています。

高齢社会対策本部は、高齢者・障害者のために弁護士・弁護士会は何をすべきかという視点で、様々な企画を立案しています。

高齢者・障害者のために、弁護士・弁護士会に対するアクセス障害をなくすことと、若手弁護士のために業務改革をすることが、この本部の狙いです。
来月「高齢者のためのホームロイヤーマニュアル(仮題)」という本が加除出版から出版されます。
私も冒頭部分を担当しています。
この本を一読していただくと、「ホームロイヤー」の実態をご理解いただけると思います。
よろしければ、ご一読ください。
                                           
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高齢者虐待対応専門職チーム② [弁護士会]

(昨日のつづき)

 弁護士と社会福祉士がチームを組んで、市町村・地域包括支援センターが行う虐待対応のケース会議に参加するというのが「専門職チーム」のスキームである。

 この場合、2つのマッチングが必要になる。

 
1 弁護士会と社会福祉士会との間でのマッチング

  日頃から弁護士会と社会福祉士会との間に交流があれば、それほどハードルは高くない。しかし、高齢者虐待についてだけ「チーム」を組もうというのは、かなりハードルが高い。

  そして、チームができた後の問題がある。市町村からケース会議への参加を求められた場合に、出席できる弁護士・社会福祉士をどのように探していくのかという点だ。特に、社会福祉士の大半は、都道府県や市町村の役所に勤めている人が多く、ケース会議を開催するときに出席可能な社会福祉士を確保することはかなり難しい。

 
2 「専門職チーム」と市町村とのマッチング

  仮に、弁護士会・社会福祉士会側のマッチング体制が十分出来上がっていても、「チーム」と市町村とのマッチング(契約)は、ハードルが高い。市町村によっては、役所にも社会福祉士がいるから、弁護士だけで良いと考えているところもある。

  市町村の担当職員である社会福祉士は、虐待事例を客観的に俯瞰することは難しい。むしろ、上司の担当課長に対して「虐待認定」や「緊急性」について、部下の社会福祉士が意見を言うことができないこともある。また、担当課長としては自己の保身のため、部下の言うことを素直には聞き入れられないということもある。そのような関係性からは、虐待に関する事実確認や緊急性の判断がゆがんだものになる可能性が高い。

  そのために、利害関係のない社会福祉士と弁護士が、客観的な立場から冷静にアドバイスをすることが重要になる。

  放っておけば高齢者の命に重大な結果が生じるおそれがあるのに、虐待者(高齢者を養護している人)からの強烈な脅しに屈して、虐待対応ができないという事態に陥る。

  「専門職チーム」は、そのような場合にケース会議の場で、足りない情報は何か、その情報は誰から取得することができるかというところから入っていく。そして、それらの情報に基づいて、虐待認定や緊急性の判断、とるべき措置などについて、法律の専門家と、福祉の専門家から、客観的なアドバイスをする。

  市町村が虐待に対応したときのリスク(虐待者からの訴訟リスク)と、虐待対応しないことによるリスク(被虐待者の死亡)を比較衡量すると、市町村は適切に虐待対応すべきであることを理解してもらうことも、「専門職チーム」の役割のひとつである。

(つづく)
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高齢者虐待対応専門職チーム① [弁護士会]

 2012年4月14日 (土)、霞ヶ関の弁護士会館で、日本弁護士連合会と日本社会福祉士会が主催する、「高齢者虐待対応専門職チーム経験交流会」が開かれた。全国から160人の弁護士と社会福祉士が集まった。

 2006年に施行された高齢者虐待防止法は、高齢者虐待の対応については、市町村・地域包括支援センターを責任主体であると位置づけている。

 しかし、市町村や地域包括支援センターの担当者は、必ずしも高齢者虐待について専門性が高いとは限らず、虐待対応が適切になされているとは限らない。

 そこで、高齢者虐待対応について、市町村・地域包括支援センターが適切な対応をするための仕組を確立するとともに、市町村・地域包括支援センターの担当者が具体的な対応を適切に実施することを目的に、「専門職チーム」を設置することにした。

 「専門職チーム」は、高齢者虐待に精通した弁護士と社会福祉士からなるチームが、それぞれの視点から担当者に助言を行い、対応力を高めることを目指して、2006年に「専門職チーム」が創設された。

 「専門職チーム」は、以下のようなスタンダードモデルのもとに活動する。

① チームとして助言にあたること
  2つの異なる専門職の視点と発想で、客観的に助言をすることにより(弁護士:虐待対応における法的な枠組に関する助言、社会福祉士;虐待対応の実践方法に関する助言)、実効性のある役割を果たすことができる。

② 助言者(アドバイザー)であること
  チームによる助言により、責任主体である市町村・地域包括支援センターが虐待対応に関する力をつけることを目指す。従って、助言者(アドバイザー)としての立ち位置を堅持する。

③ 個別のケース会議を通じた助言であること
  個別の事例を通して、市町村・地域包括支援センターの高齢者虐待に対する仕組を確立し、同時に事例について適切かつ具体的な対応策を検討することを目指す。従って、チームの助言は、個別のケース会議を通じた助言を中心とする。

④ 市町村との契約に基づく助言を目指すこと
  多くの都道府県では、都道府県の権利擁護等推進事業の予算を活用し、同事業の受託に基づき、市町村や地域包括支援センターに専門職チームを派遣している。しかし、高齢者虐待への対応を、実効性があり恒久的なものとするためには、高齢者虐待の責任主体である市町村との契約を進める必要がある。

 2012年4月現在、38の都道府県で「専門職チーム」が活躍している。未設置県は、北海道、秋田、茨城、栃木、東京、神奈川、長野、和歌山、鹿児島だ。

(つづく)

 
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「みまもりダイヤル」 [弁護士会]

横浜弁護士会は、平成22年10月4日から平成23年3月31日までの5ヶ月間、日弁連 高齢社会対策本部のモデル事業として、電話無料相談「みまもりダイヤル」を実施した。

  神奈川県に在住在勤の相談者、及び神奈川県内に居住する高齢者・障害者から、「高齢者・障害者に関わる」相談を、月曜から金曜の午前9時30分から午後4時30分まで、15分間無料で電話相談を受けるというものだ。弁護士会に電話をもらうと、48時間以内に担当弁護士から電話を架けるシステムだ。

15分の無料相談では解決できない問題は、継続相談として担当弁護士の法律事務所で相談を受けるか、出張相談として相談者のお宅に伺って相談を受ける。継続相談や出張相談は有料。

 高齢者・障害者は、弁護士にアクセス(接近)しようと思っても、身体的なハンディや物理的な問題から法律相談を受けたくても受けられない状況にある。このようなアクセス障害を取り除き、広く市民・県民からのニーズに応えようという趣旨である。

 また、高齢者・障害者本人だけではなく、高齢者・障害者の親族、ケアマネや地域包括支援センターの職員、老人ホームやグループホームの従事者など、高齢者・障害者の支援者からの専門性の高い相談を受けることも特徴のひとつだ。

 この5ヶ月間で249件の相談を受けた。

相談内容として多いものは、以下の順だ。
①成年後見33件、 ②財産管理28件、 ②相続28件、④債権債務(クレサラを含む)17件、 ⑤消費者被害11件、⑥生活保護10件、 ⑦遺言9件、 ⑧施設関係8件、 ⑨離婚・離縁7件、⑩医療福祉サービス6件、⑪損害賠償5件、⑫虐待4件、以下省略
  高齢者・障害者の権利擁護に関する相談が上位を占め、施設や福祉サービスなど専門性の高い問題に関する相談が多かったことも特徴といえる。

相談後の対応については、継続相談は33件(全相談件数の13.2%)、受任件数は14件(5.6%)、法テラスへの持ち込み1件という状況だった。

  県民からニーズがあることが判明した。このニーズに対応するため、 「みまもりダイヤル」は横浜弁護士会の正規事業として、平成23年4月以降も継続することになった。

  私は、平成23年3月末で、横浜弁護士会の「高齢者・障害者の権利に関する委員会」の委員長を退任した。「みまもりダイヤル」は、前委員長の置き土産になるのか、委員会のお荷物になるのか、今後の推移を見守っていきたい。
 

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高齢者虐待 Ⅱ [弁護士会]

(きのうの、つづき)

Ⅱ.高齢者虐待対応の課題

1. 虐待対応について市町村が抱える課題

  日本社会福祉士会の調査 によれば、市町村職員は、高齢者の虐待対応に当たって以下のような点について困難さを感じている。
① 「虐待の事実確認や緊急性の有無、分離や終結の判断基準が不明確」51%
② 「認知症やアルコール依存、多重債務や児童虐待など、複合的な事案がある」43%
③ 「地域包括支援センター等においても、専門的人材の確保や育成が困難」30%
④ 「高齢者虐待に対応する行政担当職員が少ない」29%
⑤ 「虐待の対応手順が不明確、あるいは関係者間で共有されていない」21%
⑥ 「市町村独自で行政や地域包括支援センター職員向けの研修を実施することが難しい」16%
⑦ 「法に規定される以外の事案がある」15% (原文のまま。複数回答)

2. 対応方法・判断基準の不明確さ

  虐待対応の各段階で市町村がとるべき対応について、法はスキームを示すのみで詳細な準則を示していない。また、どのような事実が確認されれば虐待と認定すべきか、どのような場合に高齢者を虐待者から保護・分離すべきか等の判断基準も示されていない。そのため、市町村の虐待対応が不適切であるか遅れることがある。適切かつ迅速な対応が求められる虐待対応にとって、この問題は深刻である。虐待対応システムの整備が求められる。
  この点について、厚生労働省は、2006年に市町村が行うべき対応を挙げその留意点を整理した文書を作成し 、法の隙間を埋めている。2011年2月に、厚生労働省の補助金事業として、日弁連と日本社会福祉士会が共同執筆した高齢者虐待対応マニュアル は、虐待対応に関する手続、準則、判断基準、法的根拠を詳細に明示した最新のものであり、活用が期待される。

3. 専門的人材の確保・育成と困難事例への対応

  市町村の職員は、虐待対応について経験を積みスキルアップしても、数年後には転勤などにより一新される。そのため、専門的人材の確保や育成が難しく、困難事例への対応に二の足を踏む状況に陥っている。自治体のこのような状況は如何ともし難い。
 このような状況を打開するため、弁護士と社会福祉士による「高齢者虐待対応専門職チーム」が結成されている。法律と福祉の専門的立場から、市町村の虐待対応担当者にアドバイスすることを通して、担当職員のスキルアップを図るとともに、困難事例について適切かつ迅速な対応の実現を目指すものである。「専門職チーム」は現在35の単位会で活動をしている 。

4. 成年後見制度の適切な活用

  前述の厚労省調査で、被虐待高齢者の中で認知症に罹患している人の割合が高いことが判った。そのため、市町村の行う虐待対応としては、虐待者から高齢者を保護・分離するだけではなく、老人福祉法32条に基づく市町村長申立による成年後見を活用することが有用である。しかし、市町村職員のスキル不足や判断ミスなどのため、成年後見は適切に申し立てられていない。
弁護士等専門職による市町村職員に対する研修を実施するとともに、「高齢者虐待対応専門職チーム」を活用すべきである。市町村は、ケース会議などの席上「専門職チーム」から多角的なアドバイスを受けて、成年後見の申立を組織として迅速に行うべきである。
                          以上


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高齢者虐待 Ⅰ [弁護士会]

 日弁連は、日本社会福祉士会とともに、高齢者虐待の問題に積極的に対応している。
 そこで、数回に分けて高齢者虐待について話す。

 1. 虐待対応件数の推移

 高齢者虐待防止法 (以下「法」という)において、市町村は地域包括支援センター とともに、虐待に関する相談・通報を受け、適切に虐待対応をする責務を負っている(法第9条、第11条等)。厚生労働省の調査 によれば、市町村に寄せられた虐待の相談・通報件数は年々増加し、2006年度に18,390件であった相談・通報が、2009年度は23、404件(1日あたり64.1件)に増えた。また、同年度に市町村が虐待と認定したのは15,615件(相談・通報件数の66.7%)であった。

 2. 虐待者と被虐待高齢者の実態

 同調査によれば、2009年度の虐待者の内訳は、「息子」が最も多く全体の41.0%、次いで「夫」17.7%、「娘」15.2%、「息子の配偶者(嫁)」7.8%の順で、86.4%が同居をしていた。他方、虐待を受けた高齢者は、女性が全体の約8割、介護保険の認定を受けている人が68.6%であった。また、認知症の人は、被虐待高齢者全体で45.7%、要介護認定を受けている人の66.7%と高い値を示している。認知症の症状と、高齢者虐待との間に密接な関係があることがいえる。

3. 虐待に対する市町村の対応の実態

 同調査で、高齢者虐待への対応状況をみると、市町村が被虐待高齢者を保護し虐待者から分離した事例 の割合は33.2%、分離しない事例は58.0%であった。分離を行った事例のなかで、「契約による介護保険サービスの利用」が38.6%で最も多く、「医療機関への一時入院」20.6%、「やむを得ない事由による措置」 は11.6%の順である。また、保護・分離後に虐待者と高齢者との「面会制限」 を行ったのは4.0%であった。

(あしたに、つづく)

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成年後見と弁護士会の役割 [弁護士会]

 横浜弁護士会は、横浜家庭裁判所から成年後見人等の推薦依頼があった場合には、概ね一週間以内に推薦名簿の中から適任の弁護士を推薦している。

 平成21年度の推薦依頼は156件、平成22年度は180件にのぼる。

 家裁からの推薦依頼をタイプ別に分けると、以下とおり。

 ①被後見人等の財産管理・身上監護を巡って親族間に争いがある場合、
 ②被後見人等が身体的・経済的虐待を受けている場合、
 ③成年後見人が被後見人の財産を遣い込むなど不正があった場合、
 ④被後見人等の財産が多額であるか管理が難しい場合、
 ⑤遺産分割など法的手続が予想されような場合などである。

 このような成年後見人等の推薦依頼は、年々増加しており、弁護士会が管理している推薦名簿の更なる拡充が求められている。これらのケースについて成年後見人等の推薦依頼が数多く寄せられているということは、これらの手続に至っていない同様の事件が市井に埋もれているということであろう。

 ところが、高齢者・障害者本人やその支援者は、ハンディキャップを抱えていることや、眼に見えない敷居の高さのために、弁護士の支援を受けたくても受けることができない状況にある。これらのアクセス障害を取り除き、市民・国民の需要に応えることこそが求められている。

 日弁連では、平成21年に「高齢社会対策本部」を設置した。同対策本部では、成年後見を始めとする高齢者・障害者をめぐる様々な問題に対して弁護士会として積極的に対応する施策を検討している。現在、同対策本部は全国の各単位会に宛てて「標準事業案」を示し、全国各地で弁護士に対するアクセス障害を除去して、幅広く高齢者・障害者にサービス提供するシステムの構築を目指している。

 横浜弁護士会においても、平成22年10月から平成23年3月まで、日弁連高齢社会対策本部のモデル事業として、2つの事業を展開した。

 1つ目は、成年後見や、虐待、消費者被害、遺言、相続など、高齢者・障害者のための無料電話相談「みまもりダイヤル」である。月曜日から金曜日の午前9時30分から午後4時30分まで15分間無料で電話相談に応じ、必要があれば弁護士会や法律事務所での相談や出張相談につなげるという事業である(受付電話番号 045-211-7720)。この無料電話相談は、平成23年4月以降も、横浜弁護士会の正規事業として実施している。

 2つ目は、地域包括支援センターへの出前講演と出前相談会(いずれも無料)である。神奈川県全域で、地域包括支援センター40箇所に弁護士を派遣して、地域の高齢者・障害者に権利擁護に関する講演を実施し、その後相談を受けるという事業である。地域包括支援センターには権利擁護相談窓口があり、虐待や市町村長申立の成年後見など、地域の高齢者・障害者に関する相談が多く寄せられている。これらの相談には複雑かつ困難な問題が多く含まれているため、弁護士の関与が不可欠である。

 このような実情に応える目的で、電話相談も地域包括支援センターでの相談も、高齢者・障害者本人からの相談だけではなく、高齢者・障害者の支援者からの相談にも積極的に応じていくことにしている。

 成年後見を始めとする高齢者・障害者の権利擁護の問題については、親族や弁護士などの専門職、市町村などの公的機関、医療機関、介護専門職、地域の支援者などが、それぞれの役割を分担して関わることによって問題の解決が図られる。弁護士に求められている役割は何かという視点に立ち返り、これらの問題に対して積極的に対応すべきである。

 弁護士会は、弁護士に対する社会的要請に応えるべく新たな一歩を踏み出そうとしている。
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子どもの権利 [弁護士会]

 十数年前に、高齢者・障害者の問題にスイッチするまで、私は子どもの権利の問題に肩までどっぷりつかっていた。京都で開かれた日弁連の委員会の合宿にも参加していた。

 15年以上前のこと。弁護士会の「子どもの権利110番」に障害のある双子のお子さんの両親が相談にきた。駆け出しの頃で、正義感に燃え筋の通らないことに対して真っ向から対峙していた。

 2人のお子さんは翌年小学校に入学することになっているが、就学時診断(正確ではないかもしれない)で障害があると指摘され、行政から昔でいう養護学校へ入学することを指示された。しかし、両親は2人の子どもを普通学校の普通学級に入れたいというのだ。

 当時選択肢としては、①養護学校入学、②普通学校の特別学級入学、③普通学校の普通学級入学があった。

 翌週、駆け出しの私とベテランの弁護士2人で、子どもたちに会いに行った。

 兄は言葉を発することができずバギーに横たわったままだった。弟は発語はできるものの会話が難しく、伝え歩きができる程度の身体能力だった。

 3人の弁護士は頭を抱えながら議論をした。その結果、小学校の校長と、教育委員会に面談を求めることになった。

 統合教育と分離教育について議論があることは理解していたが、校長も教育委員会も頑なな分離教育論者だった。もちろん弁護士は統合教育が理想であるとの論陣を張った。健常者と障害者が、同じ場で、同じカリキュラムを受けることによって、相互の立場を理解し合えると考えた。

 丁度その頃、ある市で、障害がある子どもを普通学級で指導するという試みを初めていて、ティームティチングといって複数の教員が役割分担して対応する仕組みを始めるという情報を聞きつけた。

 数回の協議を校長・教育委員会と行った。私は校長に「他の市でできることが、ここでできないわけはない」と、無理矢理の議論をしていった。教育委員会は全く相手にしてくれなかったが、校長の対応がにわかに変化した。

 最終的には、ティームティチングを導入するとともに、遠足や学校行事で人手が必要な場合には、両親が手伝うことを条件に、2人とも普通学校の普通学級に入学することができた。両親は喜び、子どもたちは楽しそうに学校へ通い始めた。

 2人の障害をもつ子どもたちの存在が、障害のないクラスメートに溶け込んだ。6年間、お互いがお互いの存在を認め合った結果、障害があってもなくても友達同士だという意識が定着していった。そして、この感覚が彼らの生活する地域にも広がっていった。時々、お宅に呼ばれてお酒を飲ませてもらった。彼らは私の膝に潜り込み、うれしそうな仕草をしてくれた。至福の喜びだった。心地よいひとときを味あわせてもらった。

 中学も、普通中学の普通学級に入学できた。高校進学は普通校に進学することはできなかったものの、小学校・中学校の仲間と地域の人々が彼らを支え合っていった。

 17歳で兄は亡くなった。20歳で弟が亡くなった。

 2人のお葬式は、小学校と中学校の同級生、それに地域の人たちで溢れていた。彼らの一生は短かったものの、彼らの友達や地域に与えた影響は計り知れないものがある。

 私の膝の間で、嬉しそうに微笑んでいた2人の仕草が、今も忘れられない。
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弁護士の報酬 [弁護士会]

 弁護士に頼みたいが、お金が幾らかかるのか分からないので不安だという話をよく聞く。そこで、弁護士の報酬がどうなっているのか話すことにする。

 弁護士に支払うお金としては、事件に着手するときに支払うお金(着手金)と、事件が終わった後に支払うお金(報酬金)がある。着手金は、いわば動き始める準備のためのガソリン代。報酬金は、うまくいった場合のご褒美と言ったところか。

 2004年3月31日までは、弁護士会に報酬規程があった。そのため、弁護士に支払う金額は、この報酬規程に則って決められていた。そして、弁護士がこの規程に違反して高額の着手金・報酬金を請求した場合には懲戒の対象になった。

 しかし、この報酬規程は独占禁止法に違反しているとして2004年4月1日に廃止された。そのため、弁護士が事件を受任するときの報酬金額は各弁護士が独自に決めることになった。同じような事件であっても、弁護士によって着手金・報酬金の金額が異なるので注意してほしい。事件を頼むときには、着手金や報酬金の金額、交通費や日当などの費用金額について説明を聞いて、納得ができた段階で依頼をすべきだ。弁護士の言いなりになって「先生に全てお任せします」という時代は終わった。

 報酬の説明がなく、しかも高額の着手金・報酬金を請求されたとして、頼んだ弁護士を弁護士会に懲戒請求するケースを散見する。弁護士会としては、報酬に関する説明と委任契約書の作成を弁護士に義務づけている。報酬に関する説明がない弁護士や、委任契約書を作成しない弁護士には、事件を依頼しない方が良い。

 また、報酬の説明に合理性があっても支払が難しい場合には、弁護士に減額を求めるか、分割払いを求めるべきだ。それでも支払が難しい場合には、「法テラス」に相談することを勧める。同居の家族単位で一定の収入金額以下であれば、弁護士費用を立て替え払いしてくれる。お金がないからと言って、弁護士への依頼をあきらめないでほしい。

 2009年8月、日弁連は「アンケート結果にもとづく 市民のための弁護士報酬の目安」という冊子を発行した。弁護士1026人からのアンケート結果に基づいて、事件毎に弁護士報酬の平均値を提示するためだ。日弁連のホームページからダウンロードができるので参考にして欲しい。例えば、
 1時間の法律相談のみ    5,000円 36.1%  10,000円 55.7%
 離婚調停 着手金     200,000円 45.1% 300,000円 41.5%
       報酬金     300,000円 39.6% 200,000円 30.3%
 自己破産 着手金     300,000円 48.7% 200,000円 37.3%
 月額顧問料          50,000円 32.2%  30,000円 30.3%
 刑事事件 着手金     300,000円 52.1% 200,000円 33.2%
        報酬金      300,000円 45.0% 200,000円 30.2%
但し、事件の難易度や着手から終了までの期間などによって着手金や報酬金の金額は異なるのが当然で、金額だけを見て一概に安いとか高いとか言うことはできない。

  ちなみに、私の法律事務所の着手金・報酬金の金額は、まあまあの線。

 

   
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弁護士の監督官庁はどこ? [弁護士会]

《クイズ1》 税理士の監督官庁は国税庁、司法書士の監督官庁は法務省。それでは、弁護士の監督官庁はどこ?。 答え、弁護士を監督する官庁はない。

《クイズ2》 それでは、弁護士が非違行為(悪いこと)をした場合、誰が監督し、誰が処分をするのか?答え、弁護士会(弁護士法31条)。

《クイズ3》 なぜ弁護士会が「弁護士の指導、監督」をするのか? なぜ監督官庁がないのか?

弁護士は、基本的人権を擁護し、社会正義を実現することを使命としている(弁護士法1条)。そして、国民の基本的人権を擁護し、社会正義を実現するためには、ときに国や権力を相手に戦わなくてはならない。もし、監督官庁があり、監督官庁の顔色をうかがわなければならないと、矛先も鈍ることになるからである。
 そのため、弁護士には法律で「弁護士自治」が認められることになっている。国民の人権と社会正義の実現のために「弁護士自治」が認められていると言っても過言ではない。

  弁護士会は、強制加入団体で、弁護士会に入らなければ弁護士としての活動をすることができない(弁護士法8条9条)。この点は、医師とは異なる。医師は医師会に加入しなくても医師としての活動ができる。弁護士会に加入させて、弁護士を弁護士会の監督の下に置くための便法である。

第五十六条 弁護士及び弁護士法人は、この法律又は所属弁護士会若しくは日本弁護士連合会の会則に違反し、所属弁護士会の秩序又は信用を害し、その他職務の内外を問わずその品位を失うべき非行があつたときは、懲戒を受ける。
2 懲戒は、その弁護士又は弁護士法人の所属弁護士会が、これを行う。
第五十七条 弁護士に対する懲戒は、次の四種とする。
 一 戒告
 二 二年以内の業務の停止
 三 退会命令
 四 除名

 そして、弁護士が弁護士としての品位を失うべき非行をした場合には、各地の弁護士会が、その弁護士を懲戒する(罰する)。「退会命令」や「除名」になった場合には、弁護士としての資格を失うことになる。

 市民などから弁護士会に懲戒請求があった場合、まず綱紀委員会で審議がなされる。綱紀委員会は前さばきをして、懲戒委員会での審理が相当か否かを判断する。懲戒委員会に送付された案件は、懲戒相当か否か、それに量刑を決める。綱紀委員会で懲戒委員会に送付する必要がないと判断された案件については綱紀委員会のみで終結して懲戒にはならない。

 私は、2006年に弁護士会の副会長に就任した。しかも、綱紀・懲戒担当の副会長だった。しかし、綱紀委員会や懲戒委員会は、理事者から独立していて、各委員会での議論は全て秘密である。会長・副会長からの圧力を受けず公正中立に判断するために、そのようなスキームになっている。

 弁護士会は、「弁護士自治」ひいては国民の人権や社会正義を実現するために、日夜奮闘していることをご理解いただきたい。


 



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