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あの悪夢 [弁護士]

 つい最近、またあの悪夢をみた。

 ここ数年、あの悪夢をみなかったので、もう見ることはないと思っていたのに。
 大声をあげたようで、隣で寝ていた妻から「大丈夫?」と声をかけられた。

 自分は司法試験に合格していない、大変だー、という夢。

 弁護士になるには、司法試験に合格しなければならない。
 この試験が大変なシケン。私が受けたころ(20数年前)の試験はこんな感じだった。

 春に3科目の短答式試験(3時間)、この試験に合格すると夏に7科目の論文試験(3日か4日)。
 論文試験に受かると、7科目の口述試験(1週間か2週間)。
 試験は1年に1回しかなく、1回で全部受からないといけない。
 もし落ちると、翌年は始めから受け直すことになる。

 試験に落ちるたびに、「また来年か…」と肩を落とす。この落胆は並大抵ではない。
何の身分もなく、確実に合格する保障もない。底なし沼に足を踏み入れたような感覚だ。
一度この試験に足を踏み入れると、足抜けができない麻薬のような試験だ。

 40歳になっても50歳になっても受け続けている、牢名主のような先輩がゴロゴロいたが、合格して晴れやかに旅立っていく人たちを見ると、「来年は自分も…」と気持ちを取り戻す。そんな毎日だった。

 この試験に受かると、2年間司法修習をする(現在の司法修習は1年間)。司法修習生の卒業試験(2回試験)に受かると、裁判官・検察官・弁護士になれる。

 私も、淡い夢を見続けた。大学を卒業して6回試験を受けた。6回目に受からなかったら、7回目、8回目…と受け続けていたのだろう。そう思うと、背筋が冷たくなる。時折でてくる「悪夢」は、未だに癒えないトラウマなのだろう。

 「淡い夢」と「悪夢」は表裏の関係にあるのかもしれない。
 今から思えば、夢が叶うと言っても、スタートラインに着くに過ぎないのだが。

 (おわり)
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芸人と弁護士 [弁護士]

 「よしもとがおくる 笑って納得 成年後見制度」開催 11月28日(月)13:30 かなっくホール(東神奈川駅徒歩​1分) くまだまさし、ショウショウ、THEフォービーズ、ロシ​アンモンキー、おしどり 延命政之弁護士(横浜弁護士会所属) http://​kanagawa-kanapan.sblo.jp/​article/48320558.html

 定員300人のホールが、動員もかけずにほぼ満員になった。この舞台(講演ではなく公演)の模様をレポートする。

 初めに、ショウショウというお笑いコンビ(芸歴約20年)がMCとして登場した。いきなり売れない芸人の本音トーク。(会場は期待どおり、笑いが引いていく。サムイ!) その後、若手芸人が3組、持ちネタを披露。くまだまさしさん以外の芸人さんはなかなかおもしろかった。

 続いて、ショウショウをはじめとする芸人と私の掛け合い。
 ショウショウ「まず先生、一言で成年後見って、どんなものなんですか?」
 私「それでは、こちらをご覧下さい」(パワポを使って制度の説明)

 説明を受けて、芸人たちからの質問。
 A「判断能力が低下したひとは、どんなことで困っているんですか?」 
 B「どうやって支援するんですか?」

 くまだ「成年後見人って、だれでもなれるんですか?」
 私「あんたは、なれない」
 くまだ「なんでなれないんですか?」
 私「カネに困っているから…」
 芸人全員が、私めがけて突進してきた。

 くまだ「先生、さっきからボクの顔ばかり見ていたけど、なんか恨みでもあるんですか?」
 私「恨みはないけど、あなたにはカネもないでしょ」
 芸人全員が、パイプ椅子をもって、私めがけて突進してくる。

 ショウショウ「なんで僕たちが後見人になれないか、教えてください」
 私「成年後見人は人の財産を管理することも仕事のひとつになっています。カネに困っている人では、被後見人の財産を使い込んでしまう可能性があるからです。」
 芸人全員「はぁ、そういうことだったのか」

 ショウショウ「成年後見制度というものの存在は分かりました。では、どういうシステムになっているんでしょうか」
 私「それでは、こちらをご覧下さい」(パワポを使って制度の説明)

 こんな感じで話が進んでいき、実際に成年後見制度で救われたという事例について寸劇。被害にあった高齢者・障害者と、悪徳業者との会話から入り、困っているときに成年後見人が登場する。
 お姉さん「こんなとき、正義のヒーローがいれば。そうだ、成年後見人がいるじゃないですか。みんなで一緒に呼びましょう。せ~の、成・年・後・見・人!」
 そこで、成年後見人が登場。
 成年後見人「ちょっとすいません!…」
 この寸劇の合間に、ショウショウと私の掛け合いがあり、私がコメントをしていきました。

 それにしても、台本が、(よしもとらしく)ズサン。
 台本の随所に「※よきところで…」とか「※終わったところで…」と書いてあるだけ。

 いくらアドリブで証人尋問をする私としても、笑いをとりながらのアドリブには、参った。
 少しオーバーアクション?になってしまったのは、この辺りの事情によるものだ。

 人前で一度でも笑いをとると、やみつきになる。これが、よしもととコラボをして感じたことだ。
 どこかの府知事から市長になった元弁護士も、この「人前で笑いをとって、自分は何でもできると思ったこと」が堕落への第一歩だったのではないのか。

これ以上、お笑いの世界に足を踏み込まない、弁護士としての本来の仕事をガンバル、このことを心に誓って舞台を降りた。

                                                      おわり
 

 


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師走の弁護士 [弁護士]

 20数年、12月が暇だったためしがない。
 年の瀬を迎えて、弁護士はなぜか忙しい。

 ある年は、クリスマスイブに北アフリカの人が逮捕された。
 母国から送られて来た小包(パーセル)からコカインが発見されて、逮捕された人の弁護をした。
 年末年始弁護活動をして1月4日に不起訴処分になった。(この話は別の機会に…)

 ある年は、会社と代表者の自己破産の申し立て。
 破産のための準備を何もせず、いきなりバンザイをしたケースだ。
 昼過ぎに事務所で法律相談。資金繰りがうまくいかず、給料や下請への支払ができない、どうしたら良いのかという。経営者は職人そのもので、「皆さんに申し訳ない」というばかりだった。とにかく、今年中に何とかして欲しいというのだ。
 夜、帳簿や現金などを確保するために、同僚と事務所兼自宅を訪れた。事務所の前では、下請業者が焚き火をしながら、経営者が帰宅するのを待っている。何回か通り過ぎたものの、業者がうろうろしているため事務所に入れない。そんなことを繰り返して、夜11時過ぎにやっと事務所へ入ることができた。懐中電灯であたりを照らしながら何とか帳簿などを確保することができた。結局、御用納めの日に破産の申立をすることができた。

 年末は、何年もかかっている訴訟が、和解でまとまりやすい。
 無理難題を言っていた当事者が、こんな問題に頭を悩ませながら年を越すのは勘弁して欲しい、と言いながら和解に応じることが多い。少しくらい無理を言っても、それに応じてくれる。
 弁護士仲間では、年末こそ難しい事件を和解でおとせ、というのが常識になっている。
 さて、あの難事件についても、今年で終わらせようっと。

 また年末は、良き年が迎えられるよう、被後見人にカレンダーを配り歩く。
 毎年約10軒の高齢者や障害者の施設や自宅を訪問する。
 その度に、「今年はどんな1年でしたか?」と尋ねる。答えは人それぞれ。
 被後見人の想いを受けとめながら、「それでは良いお年を…」と言ってお暇する。

 今年も、12月は熱い。
 今年中に何とかして欲しいという依頼者が、毎日やってくる。
 ため息をつきながら、今年最後の仕事が終わるまで息が抜けない。
                                                   おわり

 
 
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