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あの悪夢 [弁護士]

 つい最近、またあの悪夢をみた。

 ここ数年、あの悪夢をみなかったので、もう見ることはないと思っていたのに。
 大声をあげたようで、隣で寝ていた妻から「大丈夫?」と声をかけられた。

 自分は司法試験に合格していない、大変だー、という夢。

 弁護士になるには、司法試験に合格しなければならない。
 この試験が大変なシケン。私が受けたころ(20数年前)の試験はこんな感じだった。

 春に3科目の短答式試験(3時間)、この試験に合格すると夏に7科目の論文試験(3日か4日)。
 論文試験に受かると、7科目の口述試験(1週間か2週間)。
 試験は1年に1回しかなく、1回で全部受からないといけない。
 もし落ちると、翌年は始めから受け直すことになる。

 試験に落ちるたびに、「また来年か…」と肩を落とす。この落胆は並大抵ではない。
何の身分もなく、確実に合格する保障もない。底なし沼に足を踏み入れたような感覚だ。
一度この試験に足を踏み入れると、足抜けができない麻薬のような試験だ。

 40歳になっても50歳になっても受け続けている、牢名主のような先輩がゴロゴロいたが、合格して晴れやかに旅立っていく人たちを見ると、「来年は自分も…」と気持ちを取り戻す。そんな毎日だった。

 この試験に受かると、2年間司法修習をする(現在の司法修習は1年間)。司法修習生の卒業試験(2回試験)に受かると、裁判官・検察官・弁護士になれる。

 私も、淡い夢を見続けた。大学を卒業して6回試験を受けた。6回目に受からなかったら、7回目、8回目…と受け続けていたのだろう。そう思うと、背筋が冷たくなる。時折でてくる「悪夢」は、未だに癒えないトラウマなのだろう。

 「淡い夢」と「悪夢」は表裏の関係にあるのかもしれない。
 今から思えば、夢が叶うと言っても、スタートラインに着くに過ぎないのだが。

 (おわり)
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