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師走の弁護士 [弁護士]

 20数年、12月が暇だったためしがない。
 年の瀬を迎えて、弁護士はなぜか忙しい。

 ある年は、クリスマスイブに北アフリカの人が逮捕された。
 母国から送られて来た小包(パーセル)からコカインが発見されて、逮捕された人の弁護をした。
 年末年始弁護活動をして1月4日に不起訴処分になった。(この話は別の機会に…)

 ある年は、会社と代表者の自己破産の申し立て。
 破産のための準備を何もせず、いきなりバンザイをしたケースだ。
 昼過ぎに事務所で法律相談。資金繰りがうまくいかず、給料や下請への支払ができない、どうしたら良いのかという。経営者は職人そのもので、「皆さんに申し訳ない」というばかりだった。とにかく、今年中に何とかして欲しいというのだ。
 夜、帳簿や現金などを確保するために、同僚と事務所兼自宅を訪れた。事務所の前では、下請業者が焚き火をしながら、経営者が帰宅するのを待っている。何回か通り過ぎたものの、業者がうろうろしているため事務所に入れない。そんなことを繰り返して、夜11時過ぎにやっと事務所へ入ることができた。懐中電灯であたりを照らしながら何とか帳簿などを確保することができた。結局、御用納めの日に破産の申立をすることができた。

 年末は、何年もかかっている訴訟が、和解でまとまりやすい。
 無理難題を言っていた当事者が、こんな問題に頭を悩ませながら年を越すのは勘弁して欲しい、と言いながら和解に応じることが多い。少しくらい無理を言っても、それに応じてくれる。
 弁護士仲間では、年末こそ難しい事件を和解でおとせ、というのが常識になっている。
 さて、あの難事件についても、今年で終わらせようっと。

 また年末は、良き年が迎えられるよう、被後見人にカレンダーを配り歩く。
 毎年約10軒の高齢者や障害者の施設や自宅を訪問する。
 その度に、「今年はどんな1年でしたか?」と尋ねる。答えは人それぞれ。
 被後見人の想いを受けとめながら、「それでは良いお年を…」と言ってお暇する。

 今年も、12月は熱い。
 今年中に何とかして欲しいという依頼者が、毎日やってくる。
 ため息をつきながら、今年最後の仕事が終わるまで息が抜けない。
                                                   おわり

 
 
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