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少年事件Ⅰ その2 [弁護士の仕事]

(きのうの続き)

少年の行為が、殺人罪(刑法199条)の構成要件に該当しないことを立証する必要がある。
 本件では、殺人の実行行為性と、殺意(殺人の故意)の有無が争点になる。

 殺人の実行行為性を否認するには、
 ① そもそも、彼の行為は人を殺すだけの行為ではなかった
 ② 彼の行為と父親の死亡の結果について因果関係がない
 のいずれかを立証する必要がある。

 殺意を否認するには、
 ① 彼に父親を殺害する動機がない
 ② 反対動機を形成する可能性がない
 ことを立証する必要がある。 

 事実関係は、概ね以下のとおりである。

 父親は朝寝坊をしている息子を起こしに行った。しかし、息子は起きない。しばらくして、父親は再度息子を起こしに行った。そして、息子に対して生活態度が乱れていることを叱責した。息子は起きたものの、父親の小言に辟易とした。
 父親は、息子のふてくされた態度に激怒し、息子の両肩に手をかけて諫めた。
 息子は、肩に置かれた父親の手を振り払った。
 父親は、腕を払われた拍子に、背中から後ろに倒れた。
 父親は、その場から動かなかった。
 救急車で搬送された病院で父親は亡くなった。

 弁護団として、以下の仮説を立て、その仮説を裏付ける証拠を見つけることを立証方針に決めた。
 実行行為性の①については、父親の手を振り払った行為に殺人の実行行為性はない。
 実行行為性の②につしては、司法解剖の結果次第である。
 殺意の①について、当時息子は生活態度が乱れていたが、父親殺害の動機があるとはいえない。
 殺意の②について、父親を殺してはいけないが、死んでもかまわないという状況はなかった。

 実行行為性の①と殺意の①②は、いずれも本人の供述と母親の目撃証言で立証できる。
 問題は司法解剖の結果だ。

 (つづきは、あした) 
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