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高齢者虐待 Ⅱ [弁護士会]

(きのうの、つづき)

Ⅱ.高齢者虐待対応の課題

1. 虐待対応について市町村が抱える課題

  日本社会福祉士会の調査 によれば、市町村職員は、高齢者の虐待対応に当たって以下のような点について困難さを感じている。
① 「虐待の事実確認や緊急性の有無、分離や終結の判断基準が不明確」51%
② 「認知症やアルコール依存、多重債務や児童虐待など、複合的な事案がある」43%
③ 「地域包括支援センター等においても、専門的人材の確保や育成が困難」30%
④ 「高齢者虐待に対応する行政担当職員が少ない」29%
⑤ 「虐待の対応手順が不明確、あるいは関係者間で共有されていない」21%
⑥ 「市町村独自で行政や地域包括支援センター職員向けの研修を実施することが難しい」16%
⑦ 「法に規定される以外の事案がある」15% (原文のまま。複数回答)

2. 対応方法・判断基準の不明確さ

  虐待対応の各段階で市町村がとるべき対応について、法はスキームを示すのみで詳細な準則を示していない。また、どのような事実が確認されれば虐待と認定すべきか、どのような場合に高齢者を虐待者から保護・分離すべきか等の判断基準も示されていない。そのため、市町村の虐待対応が不適切であるか遅れることがある。適切かつ迅速な対応が求められる虐待対応にとって、この問題は深刻である。虐待対応システムの整備が求められる。
  この点について、厚生労働省は、2006年に市町村が行うべき対応を挙げその留意点を整理した文書を作成し 、法の隙間を埋めている。2011年2月に、厚生労働省の補助金事業として、日弁連と日本社会福祉士会が共同執筆した高齢者虐待対応マニュアル は、虐待対応に関する手続、準則、判断基準、法的根拠を詳細に明示した最新のものであり、活用が期待される。

3. 専門的人材の確保・育成と困難事例への対応

  市町村の職員は、虐待対応について経験を積みスキルアップしても、数年後には転勤などにより一新される。そのため、専門的人材の確保や育成が難しく、困難事例への対応に二の足を踏む状況に陥っている。自治体のこのような状況は如何ともし難い。
 このような状況を打開するため、弁護士と社会福祉士による「高齢者虐待対応専門職チーム」が結成されている。法律と福祉の専門的立場から、市町村の虐待対応担当者にアドバイスすることを通して、担当職員のスキルアップを図るとともに、困難事例について適切かつ迅速な対応の実現を目指すものである。「専門職チーム」は現在35の単位会で活動をしている 。

4. 成年後見制度の適切な活用

  前述の厚労省調査で、被虐待高齢者の中で認知症に罹患している人の割合が高いことが判った。そのため、市町村の行う虐待対応としては、虐待者から高齢者を保護・分離するだけではなく、老人福祉法32条に基づく市町村長申立による成年後見を活用することが有用である。しかし、市町村職員のスキル不足や判断ミスなどのため、成年後見は適切に申し立てられていない。
弁護士等専門職による市町村職員に対する研修を実施するとともに、「高齢者虐待対応専門職チーム」を活用すべきである。市町村は、ケース会議などの席上「専門職チーム」から多角的なアドバイスを受けて、成年後見の申立を組織として迅速に行うべきである。
                          以上


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