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成年後見と弁護士会の役割 [弁護士会]

 横浜弁護士会は、横浜家庭裁判所から成年後見人等の推薦依頼があった場合には、概ね一週間以内に推薦名簿の中から適任の弁護士を推薦している。

 平成21年度の推薦依頼は156件、平成22年度は180件にのぼる。

 家裁からの推薦依頼をタイプ別に分けると、以下とおり。

 ①被後見人等の財産管理・身上監護を巡って親族間に争いがある場合、
 ②被後見人等が身体的・経済的虐待を受けている場合、
 ③成年後見人が被後見人の財産を遣い込むなど不正があった場合、
 ④被後見人等の財産が多額であるか管理が難しい場合、
 ⑤遺産分割など法的手続が予想されような場合などである。

 このような成年後見人等の推薦依頼は、年々増加しており、弁護士会が管理している推薦名簿の更なる拡充が求められている。これらのケースについて成年後見人等の推薦依頼が数多く寄せられているということは、これらの手続に至っていない同様の事件が市井に埋もれているということであろう。

 ところが、高齢者・障害者本人やその支援者は、ハンディキャップを抱えていることや、眼に見えない敷居の高さのために、弁護士の支援を受けたくても受けることができない状況にある。これらのアクセス障害を取り除き、市民・国民の需要に応えることこそが求められている。

 日弁連では、平成21年に「高齢社会対策本部」を設置した。同対策本部では、成年後見を始めとする高齢者・障害者をめぐる様々な問題に対して弁護士会として積極的に対応する施策を検討している。現在、同対策本部は全国の各単位会に宛てて「標準事業案」を示し、全国各地で弁護士に対するアクセス障害を除去して、幅広く高齢者・障害者にサービス提供するシステムの構築を目指している。

 横浜弁護士会においても、平成22年10月から平成23年3月まで、日弁連高齢社会対策本部のモデル事業として、2つの事業を展開した。

 1つ目は、成年後見や、虐待、消費者被害、遺言、相続など、高齢者・障害者のための無料電話相談「みまもりダイヤル」である。月曜日から金曜日の午前9時30分から午後4時30分まで15分間無料で電話相談に応じ、必要があれば弁護士会や法律事務所での相談や出張相談につなげるという事業である(受付電話番号 045-211-7720)。この無料電話相談は、平成23年4月以降も、横浜弁護士会の正規事業として実施している。

 2つ目は、地域包括支援センターへの出前講演と出前相談会(いずれも無料)である。神奈川県全域で、地域包括支援センター40箇所に弁護士を派遣して、地域の高齢者・障害者に権利擁護に関する講演を実施し、その後相談を受けるという事業である。地域包括支援センターには権利擁護相談窓口があり、虐待や市町村長申立の成年後見など、地域の高齢者・障害者に関する相談が多く寄せられている。これらの相談には複雑かつ困難な問題が多く含まれているため、弁護士の関与が不可欠である。

 このような実情に応える目的で、電話相談も地域包括支援センターでの相談も、高齢者・障害者本人からの相談だけではなく、高齢者・障害者の支援者からの相談にも積極的に応じていくことにしている。

 成年後見を始めとする高齢者・障害者の権利擁護の問題については、親族や弁護士などの専門職、市町村などの公的機関、医療機関、介護専門職、地域の支援者などが、それぞれの役割を分担して関わることによって問題の解決が図られる。弁護士に求められている役割は何かという視点に立ち返り、これらの問題に対して積極的に対応すべきである。

 弁護士会は、弁護士に対する社会的要請に応えるべく新たな一歩を踏み出そうとしている。
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