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後見 障害者の身上監護Ⅱ [成年後見]

 40歳代の男性は、7、8年前にバイク事故を起こし、右足を切断した。事故で、身体的障害だけではなく精神的障害を負った。高次脳機能障害という障害だ。交通事故の賠償金として数千万円が入ってきた。

 当初、奥さんが成年後見人に選任されていた。しかし、妻は離婚をする意思が固く後見人を辞任することになったため、私が後任の後見人に就任した。

 事故後、彼は障害のため混乱した。自分は17歳で、彼女と付き合っている。彼女と毎晩電話でデートしている。そろそろプロポーズしよう思う。子どもは2人欲しい。名前は○○と××にしたい。と、自分の置かれている状況を認識するようになった。そして、毎晩奥さんに電話をかけ続けた。

 実際、お子さんの名前は○○と××なのだ(潜在意識があるのかも知れない)。

 彼は、自分は傷害事件の被害者である。母親に右足を切られた。母親が犯人だと考えている。母親と会うと、「犯人!」と指さす。そして、母親の彼に対する対応に、彼は嫌悪感を剥きだしにする。

 彼の置かれている状況と、彼を取り巻く状況を総合判断すると、在宅では生活をすることができないと考えた。そのため、当初施設入所を試みた。病院 → 障害者施設 → グループホームとトライしたが、どこも、彼の気持ちに合わなかった。そのため、在宅で支援する仕組みを作ることにし、家の1階を改築した。その後、定期的にケース会議を区役所で開き、ケースワーカーを交えて現状における問題点や、今後の対応についた議論をした。交通事故の賠償金が数千万円入ったものの、彼の身上監護は困難を極めた。妻や母親は、事実上関わることが難しく、障害者自立支援法の制度を活用して支援を始めた。

 最も困難だったのは、妻からの離婚申立に対する対応だった。

 【離婚調停】
 家庭裁判所での調停は当事者同士の協議で離婚するか否か、離婚の条件などを決めて行くのだが、成年後見人が被後見人の気持ちを代理して離婚の意思表示をすることはできない。そのため調停では決着がつかず、訴訟に移行せざるを得ない。

 【離婚訴訟】
 訴訟においても、本人が意思を表明できないため、和解は難しく判決で結論を出さざるを得ない。この場合、本人の意思を尊重することは当然であるが、妻との離婚について、本人の意思は推認できない。何せ、本人は奥さんと結婚したくて、電話でラブコールをしているのだから。そのため、客観的な事実を主張するのみで、離婚意思や離婚後の条件について、本人の意思を表明することができなかった。

 結果として、離婚は認められ、親権は妻に。養育費や財産分与などの財産的給付についても、客観的な資料に基づいて判決で決められた。

 私は、彼を取り巻く様々な問題について、定期的にケース会議で議論をして決めている。
 成年後見人としては、財産管理や身上監護について包括的な代理権はあるものの、いろいろな事象を的確に判断することは難しい。このような対応で良いのかどうかを含めて、悩みながら対応している。
 
 
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