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刑事事件 [弁護士の仕事]

 最近は軟弱な弁護士になってしまったが、以前の私は戦う弁護士だった。20数年前、成り立ての私は一年間に国選弁護事件(刑事事件)を29件こなした。このイソ弁をボスがどのように見ていたか想像すると、冷や汗が出てくる。

 今から約10年前、ある国選を受任した。罪名は殺人罪。
 喧嘩の仲裁に入った被告人が、逆恨みされて殴り倒され、反撃のために足蹴りをしたところ、足は相手の胸を直撃した。搬送先の病院で相手は亡くなった。

弁護人の意見 「被告人は無罪」
その根拠は、①被告人の暴行と死の結果に因果関係なし、②正当防衛、③殺意なし

弁護人からの証拠開示請求
① 救急搬送した消防隊員の調書、② 剖検結果報告書(解剖の際に作られた報告書)

弁護人からの証拠調請求
① 証人申請 ⅰ一緒に酒を飲んでいた友人 ⅱ喧嘩の目撃者 ⅲ救急搬送した救急隊員 ⅳ解剖医
② 証拠物 当時被告人が履いていたサンダル

裁判所の判断
1 因果関係
  救急隊員の心臓マッサージで肋骨が折れ、その骨が心臓に刺さった。被告人の履いていたサンダルは柔らかい素材で心臓に衝撃を与えることは不可能。被告人の足蹴りと死との因果関係は認められないが、傷害の結果との間に条件関係がある。
2 正当防衛
  正当防衛は認めず、誤想過剰防衛を認定。被告人は二度被害者に向けて足蹴りをしており、二度目の足蹴りがヒットした。この段階で「急迫不正の侵害」はなかった。
 
判決
  被告人は、懲役3年。未決勾留日数2年6月を刑に参入。 (求刑は懲役8年)

殺人罪を認定せず、傷害致死罪の認定。

 被告人に控訴の意思はなく、検察官からの控訴もなかった。判決は確定した。

 半年後に刑務所から出てきた被告人は、爽やかな顔で私の事務所を訪れた。長い裁判だったが、被告人を信頼して戦ったことに爽快感があった。しかし、本当は無罪にできた事件だな。
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