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離婚 [弁護士の仕事]

 同じような離婚事件が2件、ほぼ同時期に受任し、ほぼ同時期に終わった。調停が不成立に終わり訴訟で争った。いずれも妻が夫の留守中に子ども2人を連れて家を出て行ったケース。私は夫の代理人だ。

 2件とも、夫が暴力を振るったとか、夫が妻の会話を盗聴した、などという被害者として妻が離婚を請求してきた。しかし、実際には、妻が夫名義の数千万円の預金を無断で流用したり、妻が複数の男性と不貞行為をしていたり、自分の不始末を覆い隠すために様々な離婚原因をねつ造していた。

 切ないのは、家に帰ると家具や日用品がなくなっていて、しかも前日まで、「わいわいがやがや」会話していた子どもたちがいないのだ。この喪失感、言葉では言い尽くせないものがある。しかも、自分に何らの非がある訳でもない。踏んだり蹴ったりというのは、こういうことを言うのだろう。アメリカでは、共同親権を行使している片親が子どもを連れ去ることは「誘拐罪」として刑事事件として立件される。日本では犯罪にはならないとしても、犯罪以上に罪は重いのではないか。夫は妻を「絶対に許さない」と言い放った。

 事件が終結するまで、2年半以上の時間を費やした。時間もさることながら、夫の受けた精神的な苦悩は、端から見ていても痛々しい。言葉を選びながら、打ち合わせを繰り返した。

 子どもの心のケアも必要だ。子どもたちは、家を出ることについて妻と共犯だ。その負い目が子どもたちにはある。また、妻と生活しているため夫(父親)のことを口に出すことも憚られる。父親はいないものとして自分の生活を組み立てなければならない。

 調停のときから、夫は妻に対して、子どもとの面会交流(面接交渉)を求めたが、妻は拒絶した。「子どもたちが夫(父親)に会いたくないと言っている」という。ここで、夫は苦悩を増幅させる。「踏んだり蹴ったり」以上の気持ちであることが手に取るように分かる。

 結果として、
  夫婦は離婚する。
  子どもたちの親権者は母。
  養育費は「算定表」という虎の巻に従って算出された金額。
  財産分与は、可能な限り少額に落ち着いた。
  妻に不貞があったケースでは慰謝料数百万円を夫がもらうことになった。

 夫にとって、金銭的な出費は少なくて済んだ。しかし、断ち切られた子どもとの「絆」を回復することができるのか不安が残る。離婚後、夫が子どもたちと以前のように「わいわいがやがや」できるよう祈るばかりだ。


 
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