SSブログ

後見 障害者の身上監護Ⅰ [成年後見]

 私が後見人をしている70歳代の女性が、今月特別養護老人ホームに入居する。昨年老健に入所し、半年で特養に入居することができた。

 彼女は、約40年間精神科病院に入院していた。統合失調症で、40年前の急性期には、激しい抵抗があったため閉鎖病棟で治療を受けた。症状が緩和されたのちも、閉鎖病棟での「治療」が続いた。

 私が初めて彼女に会った7年前、彼女は薬のせいか、目はうつろで、こちらの質問にも全く答えられない状況だった。お兄さんが大好きで、お兄さんからの依頼で成年後見人に就任した。「自分が死んだ後のことが心配だから、後見人になってくれ」と切望された。

 1年に数回、お兄さんと一緒に閉鎖病棟の閉鎖された面会所で、しかも医師や看護師の監視のもとに面会をした。お兄さんは1ヶ月に一度面会をしていた。

 無表情で無反応な、面会の時の様子を見ていると、彼女を「病院から出したい」という気持ちにはならなかった。また、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律20条2項によれば、成年後見人は「保護者」の第1順位にあり、彼女が社会に出て誰かに損害を与えた場合には後見人が責任を負うことになっている。

 このまま、精神科病院で暮らし続けるのだなと、私は内心思っていた。

 しかし、昨年突然精神科病院のPSWから、グループホームか老健への転出を求められた。精神障害者に対する「病院から在宅へ」というキャンペーンの一環だった。社会的入院は、そもそも医療的入院ではないため、彼女が病院にいる必然性はないわけだ。それじゃぁ、なんで40年以上も彼女は精神科病院にいたのか、私には分からない。

 精神科病院から老健(介護老人保健施設)へ移った彼女は、変身した。

 老健に移った日に、彼女と一対一で会話をした。
 私 「○○さん、病院を出られたら何がしたい?」
 彼女「紅茶にジャムをいっぱい入れてのみたい」「それから、福神漬けをいっぱい食べたい」
 私 「○○さん、紅茶と福神漬けがすきなの?」
 彼女「大好き。病院を出たら毎日飲んだり食べたりするの…」
 精神科病院で、こんな意味のある会話をしたことがなかった。
 しかも、笑っている彼女を見たことがなかった。
 彼女は笑っていた。

 精神障害者ご本人の意向とは無関係に病院に入れられ、本人の意向とは無関係に病院を出される。精神障害者も人間であり、意思があることを、この国はどう考えているのだろうか。いつになったら、こんなことがなくなるのか。

 被災地における障害者にも同様の対応がなされている。
 人間であること、意思を持っていることを忘れた対応に、激しい怒りを覚える。

 


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:blog

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:[必須]
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント

トラックバック 0

遺産分割弁護士の報酬 ブログトップ

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。