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後見 障害者の親亡き後Ⅱ [成年後見]

 被後見人は、50歳代の男性。重度身体障害者で国立病院に数十年入院している。ヘッドギアを付けて車いすで移動する。会話は成り立たず、顔の表情で意思表示をする。ビーチポールを両手に抱えて一日を過ごす。

 約9年前に、音楽家だった父親から、被後見人の生活をどのように支援していくべきかという相談を受けた。
 「自分はあまり長生きできないだろう。母親と弁護士さんとで、息子をよろしく頼む」という主旨だった。
 成年後見を使うとして、果たしてどのようにスキームを作るか。5、6回打ち合わせをした。息子さんとも面談をした。

 選択肢としては、
 ① 私が息子さんの成年後見人に就任する。
 ② 母親が成年後見人に就任する。
 ③ 私と母親が成年後見人に就任し、複数後見をする。

 母親ひとりでも、息子さんの身上監護(生活支援)と財産管理はできると判断。その上で、母親をどのように支援していくか議論を重ねた。その結果、母親ができる限り、事実上ひとりで後見業務をして、定期的に方針の確認をしながら事実上私が母親を監督するという仕組みを作った。

 母親と私が後見人に選任された直後に父親は亡くなった。ここから、二人三脚が始まった。順調に後見業務は続いていった。

 約2年前に母親に癌が見つかった。その頃から、母親亡き後について、主治医やMSW、看護師と議論を始めた。心肺停止後延命治療をするか否か、予想される手術をする場合にどのような治療法を選ぶかなどなど、インフォームド・コンセントと医療同意について、予め議論をしておくことにした。母親の意向と、被後見人の気持を重視して、1つずつ論点をつぶしていった。約1年、このようなケース会議が続いた。母親の子どもに対するきめ細やかな気持ちが随所に見て取れた。せつない気持ちと、ほっとする気持ちが交錯しながらの議論だった。

 今年4月、桜の満開の日に、母親は亡くなった。
 
 父親と母親の思いを受けとめ、真の意味で、親亡き後の後見業務が始まった。
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