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相続財産管理人 [弁護士の仕事]

 今日は、午前中から相続財産管理人の仕事で茅ヶ崎へ行ってきた。被相続人の不動産を売却する交渉をするためである。
 
 相続人が、いるかいないか明らかでないとき(相続人全員が相続放棄をして、結果として相続する者がいなくなった場合も含まれる)には、家庭裁判所は、申立てにより、相続財産の管理人を選任する。
 
 相続財産管理人の仕事は、破産管財人の仕事に似ている。被相続人の財産をお金に換えて財団を形成し、その財団から被相続人の債務(借金など)を弁済していく。最終的には、特別縁故者(被相続人と特別の縁故のあった者)がいる場合には縁故者に相続財産を分与し、いない場合には国庫に帰属する。

 5、6年前に遭遇した事件は、今でも時々思い出す。

 父が亡くなり(母は既に亡くなっている)、長女と次女が法定相続人であった。しかし、マンションの住宅ローンがあったため、娘2人は相続放棄し相続人がいなくなった。そのため私が相続財産管理人に選任された。

 被相続人名義のマンションに、知り合いの不動産屋さんと足を踏み入れると、そこはゴミ屋敷。生前着ていたと想われる服や、食器なども散乱していた。それだけなら、びくともしない。なんと居間のテーブルの上に、亡父の遺骨と位牌が残されていたのだ。薄暗い部屋の中で、遺骨と位牌は白っぽく浮き上がっていた。遺骨と位牌は相続財産ではないため、相続財産管財人が管理すべきものでないことは言うまでもない。

 翌日、私は長女に電話をした。すると長女は「私たちには関係ありません。そちらで処理してください」と言うのだった。私が「あなたのお父さんの遺骨と位牌ですよ。何とかしてください」と言っても、引き取ることはできないの一点張りだ。

 後で分かったことだか、娘ふたりは生命保険金3000万円を受け取っていた。保険金の受取人が長女・次女となっていたため、保険金は相続財産に含まれず、娘ふたりの固有財産となる。保険金でふたりはディズニーランドの近くにマンションを購入した。

 私は再度娘に電話した。「貴方たちは、人間として、やってはいけないことをしようとしている。ご両親は貴方たちを愛情をもって育てたし、保険金もご両親が貴方たちのことを思って保険料を支払い続けた結果であることを考えてください」と。しかし、「私たちには私たちの生活があります」と言い張る。「貴方たちは決して幸せな人生を送ることはできない!」と心の中で叫びながら、電話を切った。

 結局、遺骨と位牌は被相続人の妹が引き取った。

 私は、自分とこの父親とを重ね合わせながら、子どもたちが楽しそうに談笑するのを眺めていた…。


 
  

 
 
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