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後見 高齢者の財産管理Ⅰ [成年後見]

 私が後見人をしている80歳代のご婦人について。

 彼女にはご主人がいて、お嬢さんも2人いる。しかし、私が成年後見人になっている。7年前から毎月15万円の生活費を自宅に届けている。

 ご主人に対しては、50年前の浮気を攻め続け、ご主人はとうとう家を出て行ってしまった。お嬢さんに対しては、貸したお金を返せと電話攻撃。主治医に言わせると「認知症」らしい。7年前から彼女は一人っきりで、ご主人名義の家で暮らしている。

 ちょうどその頃、彼女は何度も消費者被害に遭っていた。羽毛布団4組30万円、鍋釜のセット25万円、床下乾燥剤30万円。次々販売だ。区役所のケースワーカーから相談を受け、私が後見人に就任することとなった。ケースワーカーは、後見人就任後も、身上監護について引き続き支援を続けてくれると約束した。それを条件に、私は後見人に就任することを承諾したのだ。しかし、転勤で担当者が代わると関わりが少なくなり、現在ケースワーカーは誰も関わっていない。かわいいケースワーカーの甘い言葉にだまされた…。

 就任当初は、訪問のたびに「どこの馬の骨とも分からない人に通帳を預けるとは、私も馬鹿よね!」「通帳を返してちょうだい」と言われ続けた。私が通帳を返すと言うまで彼女は言い続けた。そこで、私は銀行に行き、預金をおろす場合には後見人である私の了解が必要であることを確認した。その日、私は彼女に預かっている通帳を全部返した。これを契機に信頼関係を構築することができた。

 しかし、訪問するたびに50年前のご主人の浮気の話になる。その話になると彼女の目尻はつり上がり鬼のような顔になる。その話を最後まで聞き続けることが暫く続いた。ご主人やお嬢さんに会いたい気持ちの裏返しなのかと思い、何度も家族との面談の機会を設定したが、ことごとく失敗した。夫やお嬢さんたちは、「二度と妻(母)と会いたくない」と言い出す始末だ。

 彼女の家の玄関には、「弁護士延命政之」の名刺が貼ってある。厄除けのお札?不審な人が来ると、「この人に電話をしてみてください」と言って、その場を切り抜けるのだ。

 ここ半年、私が訪問すると、桃缶をひとつガラス皿にのせて出してくれる(すごい量!)。私が「おいしいね」と言って平らげると、彼女はうれしそうに微笑む。「何んにもなくて、ごめんなさいね」と言いながら。最近、彼女の表情が穏やかになってきた。私が帰ろうとすると、「先生が毎月来てくれるから、私は生きていられるの」「本当にありがとうございます」と言って、三つ指をついて頭を下げる。「そんなことないですよ」といつものように私が言う。「また来月…」

 あれから7年がたった。

 

  
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