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後見 障害者の財産管理Ⅰ [成年後見]

 数年前、家裁の調査官から電話があった。
 知的障害者の成年後見人が不正をして、被後見人の財産約3000万円を自分のために使い込んだという。

 不正をした成年後見人は実兄だ。両親が亡くなり、親亡き後をこの兄に託した。そして、共有財産である父の遺産(かなり大きな土地)の一部を売却した。売買代金を折半すべきところを、全部自分の借金返済に充ててしまったらしい。
 
被後見人は施設に入居していて、身上監護は万全の対応がなされている。しかし、半年前から兄が施設に近寄らなくなり、数ヶ月前から連絡がとれなくなった。施設の入居費用が約200万円滞納されている。年金が2ヶ月に一度約16万円預金口座に振り込まれるが、その口座がどうなっているかも分からない。施設からの通報により、この不正は発覚した。

 兄を解任して、私を後見人に選任したいという。弁護士の出番だ。
     ① 年金が搾取されることの防止。
     ② 預金口座の凍結。
     ③ 不動産など財産の調査。
   ここから始めるかと、私の頭に浮かんだ。

  後任の後見人に就任する意思があることを調査官に伝え、兄が後見人に選任された経緯や財産状況などを知るため事件記録を閲覧する約束をした。翌日、家庭裁判所で事件記録を閲覧した後、社会保険事務所と銀行をまわり、司法書士に登記簿謄本の入手を依頼した。

  応急措置完了。
  
  私が成年後見人に選任されたのち、
  年金は、現況報告が提出されておらず凍結されていることが分かった。
  預金は、数万円しか残っていないことが分かった。
  不動産は、父の遺産で本人名義の土地が残っていることが判明した。
  施設とは、滞納分の支払を不動産売却まで待ってもらうよう交渉した。

結果として、不動産を売却して数千万円を入手することができた。そのお金から、施設へ滞納費用を支払い、年金と不動産売却代金で、なんとか生活できる体制が整った。

 実兄の居場所は未だに分からない。刑事告訴を恐れているのかもしれない。

  このケースを分析すると、そもそも実兄が成年後見人に選任されてはいけないケースだったのだと思う。遺産分割が予定されていて利益相反の状況になることが分かっていれば、専門職後見人を選任するのが常識ではないか。それにも拘わらず親族後見人を選任したのは、なぜか? 私には分からない。

  親族後見人は不正をするから「後見制度支援信託」を導入しよう、と考える最高裁判所の考え方が理解できない。むしろ、家庭裁判所としての初動の判断ミスがこのような悲劇を招いているのだと思う。


 

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